光メモリの生きる道

 5月10日から12日までの3日間、東京ビッグサイトで「データストレージ EXPO」が開催されました。この展示会は「Japan IT Week 春 2017」を構成する複数の展示会の内の一つで、規模はそれほど大きくないのですが、当然光ディスクも出展されているだろうと、行ってきました。
 光ディスクは、パソコンやスマホなどに使われているハードディスクや半導体メモリの影に隠れて、最近ではあまり目立たない存在になっているようです。個人的には少し寂しい感があるのですが、一方でその長期保存性が買われて、データセンターなどにおいて、普段あまりアクセスしないコールドデータを保存したり、放送局などのアーカイブ用に結構使われています。会場を歩いて見つけた光ディスク・システムを紹介します。

ソニー ソニーのオプティカルディスク・アーカイブは、堅牢性が高い複数枚の業務用光ディスクを格納したカートリッジと、これを制御する高速ドライブからなる光ディスクストレージシステムです。2012年の発表以来、放送・業務用映像アーカイブを中心に、金融機関、教育・研究機関などに採用されているそうです。
 ディスクには、パナソニックと共同開発した業務用次世代光ディスク規格「アーカイバル・ディスク」を採用しています。その進化は現在第2世代に入っていて、両面合計6層構造とランド&グルーブ方式による高密度化で、1枚当たり300GBの光ディスクを11枚を収容してカートリッジ1枚で3.3TBという大容量化を実現しました。
 高速化については、8チャンネル光学ドライブを搭載したユニットを新たに開発。これは、表裏4個ずつ合計8個のレーザーヘッドでディスクの両面を同時に読み書きするというもので、読み出し転送速度2Gbps、書き込み転送速度1Gbpsを実現しています。ちなみに「アーカイバル・ディスク」の第3世代では容量が5.5TB、読み出し転送速度3Gbps、書き込み転送速度は1.5Gbpsになるそうです。
 長期保存性についても、第1世代が50年以上だったものが、第2世代では100年以上に伸びています。ライブラリーの拡張性については、カートリッジを30巻搭載する99TBタイプから535巻を搭載する1.7PBタイプまで、柔軟にシステムの拡張ができるとのことです。無通電でカートリッジを管理できるので、1.7PBのストレージをわずか700W程度の消費電力によって管理でき、大幅なトータルコスト削減を実現できるということです。
 同社では、ロボットを使ったさらに大規模な光ディスクライブラリーシステム「EVERSPAN」の技術紹介も行なっていて、光ディスクに注力する姿をアピールしていました。

三菱ケミカルメディア 三菱ケミカルメディアは、パイオニアと共同でアーカイブ用光ディスクと光ディスクライブラリーを出展しました。両社は、光ディスクアーカイブシステムを推進するために2012年、推進団体「OPARG」を設立しています。
 光ディスクの開発・製造を担当する三菱ケミカルメディアの業務用ブルレイディスク(BD)は、第三者機関であるADTC(アーカイヴディスクテストセンター)によってBD-Rの100GBモデルで推定寿命200年以上という評価を得たとしています。耐久性についても、1週間の海水浸漬試験でデータ再生が可能であることを確認しているそうです。一方のパイオニアが開発した光ディスクアーカイブシステムは、この光ディスクとRAID(安価で低容量なハードディスクを複数使った補助ストレージ装置)を組み合わせたものとなっています。

ユニテックス この他、ユニテックスはLTO(Linear Tape Open:コンピューター用磁気テープのオープン規格)装置を展示する傍ら、CD/DVDディスクパブリッシャーも出展していました。ヘッドを変えることでBDも使用できるというもので、データの書き込みからレーベル印刷までを100~200枚連続高速処理ができるそうです。
 
 

 音楽や動画などをパッケージメディアで楽しむ人は、以前よりだいぶ少なくなりました。その結果、光ディスクはメモリーにおける主役の座を譲った感もありますが、一方で長期信頼性というような特長を活かした適用分野において、決して派手ではありませんが、とても重要な役割を果たしています。

編集顧問:川尻多加志

 

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光の日

 3月8日は「光の日」ですが、その日がなぜ「光の日」になったのか、由来をご存知でしょうか? 答えは、光の速度が3×10の8乗m/sで、その数字の中から「3」と「8」をとって「光の日」としたそうです。制定したのは日本学術振興会・光エレクトロニクス第130委員会(学振130委員会)で、制定した2007年以来いろいろな活動を行なってきたということです。
 今年の「光の日」には、同委員会と日本光学会、レーザー学会、応用物理学会フォトニクス分科会の主催によって、東京・茗荷谷の筑波大学東京キャンパスで第1回の「光の日」合同シンポジウムも開催されました。
 
 光は医療やエネルギー、情報、通信、一次産業、天文、建築等に関わるあらゆる科学技術に応用され、人類の幸福、芸術、文化などの発展に貢献してきました。そして、今後ますますの進展が期待されています。
 まだ記憶に新しい2015年の国際光年では、内外で様々なイベントが催されましたが、このシンポジウム、国際光年終了後も継続して振興を図ろうと、これら光関連学会が毎年3月8日に合同記念イベントを行なうことを提案して、開催に至ったそうです。

 シンポジウムは、宮本智之氏(東京工業大学・准教授)の「開会の辞」で始まり、小林駿介氏(山口東京理科大学・名誉教授)の「『光の日』制定について:フォトンの不思議と恩恵」、中井直正氏(筑波大学・教授)の「南極で切り開く天文学-南極望遠鏡計画-」、美濃島薫氏(電気通信大学・教授)の「光コムによる光波の超精密制御とその応用」、石川哲也氏(理化学研究所・放射光科学総合研究センター長)の「X線自由電子レーザー(XFEL)施設『SACLA(さくら)』」、河田聡氏(大阪大学・教授)の「光の顕微鏡:収差と波長の壁を超えて」、荒川泰彦氏(東京大学・教授)の「量子ドットがもたらす光技術の新展開」、伊賀健一氏(東京工業大学・名誉教授)の「光の日、音の日:光エレクトロニクスの玉手箱より」と続き、神成文彦氏(慶應義塾大学・教授)の「閉会の辞」で幕を閉じました。講演終了後は、場所を茗渓会館に移して懇親会も開かれ、出席者全員で「光の日」をお祝いしました。

小林駿介 山口東京理科大学名誉教授

小林駿介 山口東京理科大学名誉教授

 「光の日」制定を提案した学振130委員会の当時の委員長、小林名誉教授は当時を振り返り、同委員会の45年間の研究活動記録CDの序文に記された制定趣旨説明文を紹介していました。そこには、こう記されていました。「ここで、われわれは、光の科学技術を研究している者として、われわれは光に感謝し、敬意をしめし、かつ親しみを込めて、3月8日を「光の日」とすることに決定しました。3月8日を「光の日」と選んだ理由は光の速さが真空中で3×10の8乗m/sであり、光は吸収されない限り休むことなく走り続けるからです」と。

 荒川教授によると、日本学術会議総合工学委員会ICO分科会ではメイマン氏がレーザー発振に成功したと言われる5月16日を「国際光デー」にすると決めたそうです。
 そうなると、国内と海外で「光の日」が二日あるということになりますが、あまり細かいこと言わないで、めでたい日が一年に二日もあるという感じで捉えて、どちらも大事にしていきたいと思いますね。

編集顧問:川尻多加志

 

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光技術は医療・ヘルスケアをどう変えるのか

 安全・安心で持続可能な社会を実現するためにも、医療分野と工学の連携による新しい診断、治療、ヘルスケア機器の開発が必要と言われています。その最先端研究の一端が、秋葉原UDXカンファレンスで開かれた第6回電子光技術シンポジウム(主催:産業技術総合研究所(産総研)電子光技術研究部門、共催:光産業技術振興協会(光協会))で披露されました。
 
 産総研・電子光技術研究部門では電子技術と光技術、およびその融合領域に関する最先端の研究開発と新産業創出の展望に関する情報を提供するため、同研究部門を中心とした産総研の研究成果を紹介するシンポジウムを毎年開催しています。今年度のテーマは「光技術の医療・ヘルスケアへの展開」、5件の招待講演を含む10件の口頭発表が行なわれました。
 

開会挨拶をする金丸正剛氏

開会挨拶をする金丸正剛氏

 
 「開会挨拶」に立った産総研・エレクトロニクス・製造領域長の金丸正剛氏は「研究開発側から見ると、医工連携がこれまでなかなか進まなかったのは技術がまだまだ成熟しておらず、現場で使うには十分でないということも大きな原因ではなかったかと思っている。今回のシンポジウムでは産総研における十数年の開発の中で、技術的にもかなりの進歩を遂げ、実際の現場との連携も非常に活発化しているという状況を知っていただきたい」と述べていました。
 
 
 一方、続いて登壇した光協会・専務理事の小谷泰久氏は「これまでのクラシカルな光技術領域では、技術が成熟して新しい動きが出にくくなっている。その代わりにIoTやAI、ロボット、自動車、医療・健康分野などへと応用領域は拡がっている。気をつけるべきは、光技術はこれまで最先端の性能を追い求めてきたが、例えば自動車や医療分野ではそのような性能より温度環境性や安全性・信頼性といったものが重要視される。求められるものが移ってきている」と述べていました。

 午前中の口頭発表のトップバッターは、産総研・健康工学研究部門・副研究部門長の鎮西清行氏で、講演タイトルは「医工連携における産総研の活用方法」、産総研における医療機器開発支援システムを紹介しました。続いて「光を用いた生体計測-細胞から個体まで-」を浜松ホトニクス・中央研究所・主幹の山下豊氏が講演。その後、産総研・電子光技術研究部門の黒須隆行氏による「光パスネットワークによる超高精細映像伝送とその医療応用」の講演が行なわれ、光による細胞・個体計測や8K画像を使った遠隔医療などが紹介されました。
 
 昼食をはさんで、午後は「レーザによる革新的な非熱的不整脈治療装置:我が国発技術の実用化」と題し、慶應義塾大学・理工学部・教授の荒井恒憲氏が不整脈治療装置の開発事例を紹介。続く産総研・電子光技術研究部門の研究成果報告では「低侵襲プラズマ止血装置の開発・実用化と国際標準化」(榊田創氏、池原譲氏)、「超短パルスレーザー加工と人工関節への応用」(屋代英彦氏)、「白色パルス光プロセスと無電解めっきを利用した手術器具作製」(島田悟氏)が紹介されました。

 休憩の後、オリンパス・モバイルシステム開発本部・部長の溝口豊和氏は「マルチスペクトル撮像デバイス技術」を講演、マルチスペクトル撮像によるデジタル病理診断を紹介。大阪府立大学・大学院工学研究科・教授の久本秀明氏は「医療・バイオ分析応用を目指す高機能材料集積型マイクロ分析デバイス」の中で、化学修飾したキャピラリー型マイクロ分析デバイスを紹介して、最後の講演は産総研・電子光技術・研究部門の安浦雅人氏による「近接場光を利用した微生物高感度検出」、光散乱の光信号用微粒子と磁気微粒子を使った微生物検出の研究事例を紹介しました。
 
 広帯域で低侵襲、空間並列といった特長を有する光技術は、イメージング機器として医療現場で幅広く利用されるとともに、新たな医療・ヘルスケア機器を創出することが期待されています。今回のシンポジウムで紹介された医工連携や光技術を用いた低侵襲治療技術、革新的デバイスや手法を用いたイメージング・センシング技術等の研究開発動向には今後も目が離せません。

編集顧問:川尻多加志

 

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自動運転技術進展の鍵を握るフォトニクス

 いま一番ホットな話題の一つとして取り上げられることの多い自動運転。リーガロイヤルホテル東京(東京 新宿区)で開かれた「平成28年度光産業技術シンポジウム」(主催:光産業技術振興協会、光電子融合基盤技術研究所)では、この自動運転やロボットなどの領域にフォトニクス技術がどのように適用されて行くのか、最新の状況が紹介されました。
 シンポジウム今年のテーマは「未来の自動車・ロボット・産業機械を支えるフォトニクス」。自動運転とセキュリティ、ロボットの進化、LiDAR技術、自動車フォトニクスのテクノロジーロードマップ、医療イメージング、さらに光エレクトロニクス実装システム技術の開発について、各分野のエキスパートが講演を行ないました。

 冒頭、「開会挨拶」に立った光産業技術振興協会・専務理事の小谷泰久氏は、政府の掲げる日本再興戦略の中で日本経済の未来を切り開く第4次産業革命の重要技術であるIoTや人工知能、ビッグデータといった革新的技術を使って如何に新しい商品やサービスを生み出すかが重要とした上で、光センサーや光通信ネットワーク、車載用カメラ、車載ネットワーク、医療・健康分野における画像処理技術といった様々な光技術は、そこで役に立つ技術であると述べました。

 経済産業省・商務情報政策局・情報通信機器課長の三浦章豪氏は「来賓挨拶」の中で、成長ががすべての前提であり、第4次産業革命、AI、IoT、ビッグデータを如何に社会に実装させていくか、言葉だけでなく実際に儲ける事を考えなければいけない時期に来ており、新しいビジネスモデルを作って行く必要があると述べました。また、日本としては最先端の技術を開発して、世界に先駆け商品化してグローバルに売って行くということを続けて行かなくてはならないとして、光技術にはまだまだ伸びしろがあり、最大限のサポートをして行きたいと述べました。

 この後に続く基調講演は「自動運転と制御系セキュリティ」と題して、電気通信大学・情報理工学研究科・教授の新誠一氏が講演。21世紀の自動運転に不可欠な技術として、高精度カメラと画像プロセッサー、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)の組み合わせを挙げるとともに、光通信技術は近未来の自動運転車の電磁障害対策に効果的だと指摘。さらにサイバーセキュリティの確保も自動車業界にとっては急務であり、中期的に光化への期待が大きいと述べていました。

 招待講演は全部で4本。1本目の「Amazon Picking Challengeとロボットの進化」を講演したのはPreferred Networks・エンジニアの米辻泰山氏です。「Amazon Picking Challenge」というのは、Amazonが主催するロボットコンテストで、倉庫の棚から商品をピッキングするという作業をロボットで競うというもの。米辻氏のグループは短い準備期間の中、Pick部門で2位(得点は1位タイ)、Stow部門で4位という好成績を収めました。センサーにはDepthカメラとLiDARを使用、画像のセグメンテーション問題ではディープラーニングを用いたそうです。現在は製造業がメインのロボット適用の可能性を物流分野でも示せたと述べていました。

 「自動運転を実現するLiDAR技術」を講演したのは、パイオニア・自動運転事業開発部・技術研究部長の村松英治氏で、自動運転におけるLiDAR技術の役割と現状の課題を紹介。走行空間センサーとして周辺環境認識を行なう機能だけではなく、自動運転用高度化地図との組み合わせによる自動位置推定、地図生成を行なうLiDAR技術のコンセプトと同社の取り組みを解説するとともに、LiDARにおいては従来型のリッチな汎用センサーではなく、車載アプリに特化した小型で低コストな専用センサーが求められるとして、同社の開発事例を紹介しました。

 「光テクノロジーロードマップ-自動車フォトニクス-」を講演したのは、東京工業大学・工学院・電気電子系・准教授の西山伸彦氏。西山氏は、ロードマップを作った光産業技術振興協会の自動車フォトニクス・ロードマップ策定専門員会の議長。講演では、自動運転開発においてフォトニクスに何ができるかをテーマに話が進められました。車外状況検知用センサーでは、あらゆる状況でも遠方を監視することが求められ、将来的には赤外カメラも加わりカメラの高解像度化が進むとして、測距技術ではメカレス型のLiDARで解像点数、フレームレートの向上が進んで行くと述べました。HMI(Human Machine Interface)技術においては、レベル3では覚醒状態検知・判断の高速化が求められるため、表示技術の高度化・高解像度化が必要になる一方、レベル4になると、この表示技術は車内エンタテイメント用で使われると述べました。さらに通信技術においては、車内では400Gbpsクラスの光ハーネスの実現が必要であり、車外においては低遅延で小規模大量パケットなど、従来のインターネット通信に加えた特殊な通信が必要と指摘しました。

 招待講演最後は、メディカル・イメージング・ コンソーシアム副理事長の谷岡健吉氏による「8Kテレビ技術とその内視鏡手術への応用」で、8K技術の概説と医療応用での数々の利点、普及のための技術面での課題、展望を紹介しました。谷岡氏は、技術課題として超高感度な8Kイメージセンサー実現のためのHARPの固体化を挙げるとともに、ディスプレイにおいては価格や視野角、軽量化・薄型化においてまだ問題が残っているとした上で、慶應義塾大学の小池教授が開発した高性能プラスチック光ファイバーやボールペン型インターコネクト技術の適用や産業技術総合研究所の「光ネットワーク超低エネルギー化技術拠点」との連携によって、8K遠隔医療の実現を図りたいと述べていました。

 最後の講演は、光電子融合基盤技術研究所・CPU間インターコネクト・テーマリーダーの土田純一氏の「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発~光I/Oコアの性能とシステム評価」。プロジェクトの概要、光I/Oコア、光I/O付きLSI基板、光電子集積インターポーザ―を実現するための集積光デバイス技術の開発の狙いと開発進捗を報告しました。さらに、開発中のFPGA(Field Programmable Gate Array)と光I/Oコアを用いたボードの概要とシステム評価の進捗および今後の取り組みについても報告。具体的成果として、光I/Oコアにおいて低消費電力(5mW/Gbps)・超高速(25Gbps×12ch)のチップサイズ(5mm角)トランシーバーの実現、光I/Oコアを用いたMMFでの25Gbps、300m伝送の実現、FPGA周辺に光I/Oコアを実装してBtoB、300mの伝送実証等を挙げていました。

 今回のシンポジウム、あくまで個人的感想ですが、自動運転に関して重要なのはダイナミック・マッピングであり、少し大げさに言えば地図を制する者が自動運転を制するのではないだろうかという印象を受けました。

写真右:東京工業大学 小山二三夫氏  写真左:後列左から 古河電気工業 黒部立郎氏、同 越浩之氏  前列左から 櫻井健二郎氏記念賞委員会 委員長 荒川泰彦氏、古河電気工業 向原智一氏、同 木村俊雄氏 光産業技術振興協会 専務理事 小谷泰久氏

写真右:東京工業大学 小山二三夫氏
写真左:後列左から
古河電気工業 黒部立郎氏、同 越浩之氏
前列左から
櫻井健二郎氏記念賞委員会 委員長 荒川泰彦氏、古河電気工業 向原智一氏、同 木村俊雄氏
光産業技術振興協会 専務理事 小谷泰久氏

 なお、シンポジウムの終了後には、同じ会場で恒例の櫻井健二郎氏記念賞の受賞式が行なわれました。櫻井健二郎氏記念賞は今回で32回。応募13件の中から受賞したのは「デジタルコヒーレント通信用狭線幅波長可変光源の開発と実用化」を行なった古河電気工業の向原智一氏、木村俊雄氏、越浩之氏、黒部立郎氏の四名と「面発光レーザを中心とするフォトニクス集積技術の開発」を行なった東京工業大学・未来産業技術研究所・教授/所長の小山二三夫氏でした。

 「デジタルコヒーレント通信用狭線幅波長可変光源の開発と実用化」では、デジタルコヒーレント通信用光源の開発に取り組み、多数のDFBレーザからなる多波長アレイと複数の光機能素子を同一基板上にモノリシックに集積する化合物光半導体技術や従来に比べパッケージ体積を半減化する樹脂接着技術、並びに高性能な制御電子回路技術の開発により、世界最高水準の高出力・高安定の狭線幅波長可変レーザ光源の実現に成功、デジタルコヒーレント通信の発展・普及に貢献したことが評価されました。

 もう一方の「面発光レーザを中心とするフォトニクス集積技術の開発」は、伊賀健一・東京工業大学名誉教授(第3回:1987年度受賞)とともに面発光レーザ(VCSEL)の室温連続発振を1988年に世界で初めて達成し、以来その性能向上と新機能創出に関する研究を継続、MEMSミラーによる波長制御やスローライトなどの新機能を包含するVCSEL集積フォトニクスの道を切り拓き、データセンタにおける光インターコネクトや日本初のレーザプリンタなどの技術発展を触発、光産業技術の新しい展開に大きく貢献したことが評価されたものです。

編集顧問:川尻多加志

 

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日本のイノベーションに光は見えるのか?

 先ごろ東京・大手町サンケイプラザで開かれた大阪大学フォトニクス先端融合研究センター主催による「第9回フォトニクスシンポジウム」。そこでは日本のイノベーションが抱える問題点や方向性が示されました。

 大阪大学では平成19年に「フォトニクス技術イノベーションの創出」をミッションに掲げ、文部科学省先端融合領域イノベーション創出拠点プログラムによって大阪大学フォトニクス先端融合研究拠点を創設。プログラムはこの3月をもって終了しますが、今回のシンポジウムはそれを記念して行なわれたもの。最後のシンポジウムに相応しい「フォトニクスとイノベーション」というテーマのもと開催され、その内容は基調講演、海外招聘講演、フォトニクスセンターの取り組み紹介、パネルディスカッション、ポスターセッション等、多岐に渡るものでした。

西尾章治郎 大阪大学総長

西尾章治郎 大阪大学総長

 開会の挨拶と最初の講演に立ったのは、大阪大学の西尾章治郎総長。西尾総長は「プログラムは今年度で終了するが、これまでの実績をベースに、さらに広範で大規模な事業化、産業化を推進するとともに、これからのさらなるイノベーション創出のシーズとなる基礎的なフォトニクス研究から研究成果の社会実装までをシームレスに遂行する教育研究施設として、来る4月から工学研究科付属フォトニクスセンターを新たに設置する」と表明しました。
 工学研究科内にセンターを設置したのは、卓越した知の拠点として産学官連携による共同研究の推進、国際的な研究拠点への進化を図るとともに、これら諸活動を通じて若手研究者の育成、特に産業イノベーションを創出する人材を次々に輩出できる体制を構築するためとのこと。その実現のために関連する専攻と密接に連携して推し進めて行きたいと述べました。

 来賓挨拶で登壇したのは、文部科学省の真先正人大臣官房審議官(科学技術・学術政策担当)。真先審議官は「産業界と国が一体となって作った本格的な取り組みである第5期科学技術基本計画では、超スマート社会を実現する『Society 5.0』の推進が提案されている。光量子技術はまさにそのプラットフォーム技術であり、強力に推進して行くべきと捉えられている」と指摘するとともに、そのためにも「人材育成、特に知的プロフェッショナルが求められている」と述べました。

 基調講演は2本。1本目は科学技術振興機構・顧問であり、科学技術イノベーション創出基盤構築事業の相澤益男運営統括(PD)による「産学連携のフロンティアを切り拓く先端融合領域イノベーション創出拠点」でした。相澤PDは、大変革の鍵を握るのは科学技術・イノベーションであるが、ゆゆしき問題が顕在化して来たと指摘します。
 その一つが、イノベーションにおける日本の国際的優位性の低迷。スイスのような経済小国がイノベーション強国として躍進し、世界におけるトップグループの座を譲らないという現状を踏まえ、世界におけるイノベーションは劇的に、しかも迅速に変化している中、世界を視野に日本のイノベーションを厳しく見直すべき時ではないかと指摘しました。
 二つ目に挙げたのが、科学技術論文に起こっている激震です。論文総数、トップ1%および10%引用論文の何れにおいても中国はダントツの勢い。ノーベル賞の受賞者については健闘しているものの、科学技術における日本の総合力の劣化は深刻だと警鐘を鳴らしました。
 その上で、日本が「抜本的に強化すべきは『イノベーションの源泉となる』基礎研究と人材育成」であり「さらに強化すべきは、本格的産学連携による『共創の場』を基盤とした持続的なイノベーションの創出と人材育成」で「その上で挑戦すべきは、世界を惹きつけるイノベーションハブとしての戦略強化だ」と述べました。

 基調講演の2本目は、大阪大学フォトニクス先端融合研究拠点を立ち上げ、初代拠点長を務めるとともに、フォトニクスセンター長も務めた河田聡大阪大学教授による「学問の壁の破壊と新産業の創出:阪大フォトニクスセンターの試み」。
 河田教授は、20世紀までの学問体系は「物理学」や「化学」といった縦割りであったが、20世紀後半には「Interdisciplinary」という概念が一般化、二つの学問を組み合わせる学問間連携の必要性が問われ、その研究が増えて行ったと述べます。
 ところが、日本人はこの「Interdisciplinary」という概念が得意ではなく、旧来の縦割り学問の中心にいたいと思う人の方が多く「Inter=間を繋ぐ」ことに興味を持つ人は多くないと感じたそうです。そもそも、間を繋ぐという意味の「Inter」が用いられている「Interdisciplinary」の日本語訳自体が「学際」。この「際」という言葉は、日本では「きわ」と読み、その意味は「端っこ」で、使われ方も「瀬戸際」「別れ際」「いまわの際」といったネガティブなものが多いと言います。これを当てはめた「学際」や「国際」という言葉では「きわ」と「きわ」の繋がり程度の意味しか持たないのではないかと指摘しました。
 河田教授は、21世紀は「Transdisciplinary」の時代であると述べます。それも「超学際」ではなく「学貫」というような概念で考えるべきで、単に組み合わせただけの融合では「端っこ」の人達は不幸だとします。
 オープンイノベーションについても、自身の経験から、単にそこに集まっている人達だけの、いわば「談合」になっている場合があるのではないかと警鐘を鳴らします。そして、こう指摘します。「本当のイノベーションはたくさんの人が集まって生まれるのではなく、一人から生まれる。本当の発明は予期せず、突然生まれるものだ」と。さらには、計画を作って計画通り実行するのではなく、余裕を持たせることができるかが肝要で、これからのイノベーションは、組織中心から人中心に考え方を変えなければならないと指摘しました。
 河田教授は、最後に老子の第57章に書かれている「為政者は何もするな。そうすれば人々は自らを正すだろう」という言葉を紹介するとともに、サン=テグジュペリの「船を造りたいのなら、男どもを森に集めたり、仕事を割り振って命令したりする必要はない。代わりに、彼らに広大で無限な海の存在を説けばいい」という言葉で講演を締め括りました。

 午前の最後に行なわれた海外招聘講演では、National Taiwan University, Academia SinicaのDin Ping Tsai教授とMax Planck Institute for the Science of Light, ErlangenのGerd Leuchs教授が、それぞれの国のフォトニクス関連研究を紹介しました。

 昼食後の午後の講演ではフォトニクスセンターの成果発表が行なわれ、井上康志フォトニクスセンター長がセンター全体の話を、協働企業の島津製作所の品田恵研究員が「ガスクロマトグラフ用プラズマフォトニクス検出器の製品化」と題し、商品化に至った共同研究内容を紹介。続いて森勇介大阪大学教授が「フォトニクス結晶のイノベーションで社会貢献」、高原淳一大阪大学教授が「ナノテクノロジーによる白熱電球の復活と起業製品化」を紹介しました。

 シンポジウム最後は、フォトニクス・イノベーションを如何に興していくかというテーマでパネルディスカッションが行なわれました。パネラーは、田中一宜産業技術総合研究所名誉リサーチャー、寺崎智宏文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課地域支援企画官、品田恵島津製作所研究員、河田聡大阪大学教授、田中敏嗣大阪大学工学研究科社会連携室長、井上康志大阪大学フォトニクスセンター長の面々。
 活発な議論の中でも、一人のパネラーから発せられた「新しいものを生み出すには、何かが終わらなければならない。その終わることを認めることができるのか。交代して行くという覚悟が日本にあるのか。今が恵まれているから失敗が怖いし、変化が怖いのではないか」という主旨の発言は、日本のイノベーションが持つ問題点を示唆するものでした。

 なお、ラウンジではフォトニクスセンターに参画する21の研究室によるポスターセッショが行なわれるとともに、夕方から行なわれた懇親会においても講演者と来場者との間で活発な意見交換が行なわれていました。

編集顧問:川尻多加志

 

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進化したCEATEC JAPN

 10月4日(火)から7日(金)までの4日間、幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2016」。今年からそのコンセプトを大きく変え、これまでの先端技術家電の総合展から、未来を見据えたコンセプトや新しいビジネスモデルを発信するCPS/IoTの総合展に大きく舵を切りました。CPSとはCyber Physical Systemの略、Iotは言わずもがなInternet of Thingsのことです。

 出展社数・登録来場者数ともに、昨年に比べて大きく伸びました。出展者数は、前年比117社/団体増(22.0%増)の648社/団体に達し、登録来場者数も、前年比1万2,132人増(9.1%増)の14万5,180人となりました。海外出展者数についても、前回の19カ国/地域からの151社/団体が、24カ国/地域からの195社/団体に増えました。

 一般公開の前日10月3日(月)には、東京千代田区のパレスホテル東京においてオープニング・レセプションが開かれました。安倍総理大臣、高市総務大臣、世耕経産大臣等が会場に駆けつけ祝辞を述べ、その他、国会議員や多くの関係者を含む837名もの方々が参加しました。

 安倍総理は、以下のように述べています。

祝辞を述べる安倍総理

祝辞を述べる安倍総理

 「世界に第4次産業革命の波が到来しています。ビッグデータやAIを活用して、人や製品が従来考えもしなかった繋がり方をすることで、新たな価値を生み出します。第4次産業革命の時代、日本が培ってきた技術や強みはもう通用しないと言う人もいるかもしれません。しかし、私はそう思いません。例えば、第4次産業革命の鍵となる精密なセンサー、ロボットの繊細な制御などの技術、コツコツと改善を積み重ねる強い現場、お客様は神様と言われ、顧客の厳しい目に鍛えられ、技術として製品差別を磨き続ける力こそ、日本の強みです。
 第4次産業革命は、国民生活を豊かにしながら、企業の生産性を向上させます。その主役である皆様の新たな挑戦をサポートして行きます。先月立ち上げた未来投資会議を中心に、必要な改革を躊躇なく断行して行きます。
 例えば、官邸でデモンストレーションを見た8k技術の医療展開、血管の1本1本までくっきりと鮮明に映し出されていました。これを使えば、内視鏡などの手術の精度が飛躍的に高まり、患者さんの負担も軽くなる、そう確信しました。
 日本は少子高齢化、そして人口減少というピンチに直面しています。しかし、皆様の優れた技術と果敢なチャレンジ精神があれば、強い日本経済を必ず実践できると確信しています。まさに「ピンチをチャンスに」です。
 今年の5月、メルケル首相と私は来年3月にドイツのハノーバーで開催される展示会「CeBIT」において、日本がパートナー国となることに同意しました。これを受け、先ほどそのパートナー契約が結ばれました。
 モノづくりやIoT分野で競争力を有する日本とドイツが連携することが、この分野の世界標準の獲得に向けた大きな一歩になることは間違いないと思います。私と一緒に「CeBIT」に行きましょう。そして、世界が驚くような日本の技術を発信し、日独で世界の第4次産業革命をリードして行きたいと思います。
 IT、エレクトロニクス産業は100万人以上の雇用を支える我が国の基幹産業です。皆様の活躍なくして日本の経済発展はないのです」

 展示会場では各社のコミュニケーション・ロボットが目につきましたが、CEATEC JAPANに出展した中から、特に優れたイノベーションに対して贈られる「CEATEC AWARD 2016」のうち、経済産業大臣賞には富士通の「網膜走査型レーザアイウェア技術」が選ばれました。
 「網膜走査型レーザアイウェア」はQDレーザが開発したもので、超小型レーザープロジェクターから網膜に直接映像を投影するヘッドマウントディスプレイです。視力やピント位置に影響されにくいという特長から、視覚障害者(ロービジョン)に対する視機能支援として開発が進められています。
 眼のピント調整が不要なフリーフォーカス、突出部がなく自然な外観を実現するユニバーサルデザインなど種々の利点を有し、従来技術を置き換える可能性が大きいとして、ロービジョン者の視覚支援、AR/VRの高度利用など、多方面での活用が期待される重要技術との評価を得ての受賞となりました。光業界の人間としては、何とも嬉しい受賞です。

 なお、次回の「CEATEC JAPAN 2017」は10月3日(火)から6日(金)までの4日間、場所は同じく幕張メッセで開催される予定ですが、来年は「InterOpto」も会場を幕張メッセに移し、10月4日(水)から6日(金)の3日間の同時開催となるそうです。

編集顧問:川尻多加志

 

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2020年までのチャンスを掴め

 9月14日(水)から16日(金)までパシフィコ横浜で開催された「InterOpto 2016」(主催:光産業技術振興協会)。初日と二日目には毎年恒例の「光技術動向セミナー」と「光産業動向セミナー」が開かれました。今年は「光技術動向セミナー」に参加して来ました。

「主催者挨拶」をする小谷専務理事

「主催者挨拶」をする小谷専務理事

 今年の「光技術動向セミナー」では、光産業技術振興協会の小谷泰久専務理事が「主催者挨拶」を行なった後、日本電信電話 未来ねっと研究所 フォトニックトランスポートネットワーク研究部の乾哲郎主任研究員による「光通信ネットワークの最新動向」、メルクの長谷川雅樹量子材料応用開発マネージャーによる「AR/VRと光技術応用ユーザインタフェースの最新動向」、産業技術総合研究所 フレキシブルエレクトロニクス研究センター 先進機能表面プロセスチームの山本典孝研究チーム長による「光有機材料・デバイスの最新動向」、沖電気工業 情報・技術本部 研究開発センタ ネットワーク・端末技術開発部の中村幸治主任研究員による「光無機材料・デバイスの最新動向」が続き、特別講演としては海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センターの川口勝義センター長代理が「光海底ケーブル技術を用いた観測システムと応用展開」を講演、続いて神戸大学 大学院システム情報学研究科 システム科学専攻の的場修教授による「情報処理フォトニクスの最新動向 − 光メモリ、光インターコネクション、光演算の最新技術 −」、レーザー技術総合研究所の藤田雅之主席研究員による「これからの光加工・計測、光医療のあり方 - その将来像とは -」、東京工業大学 工学院 電気電子系の山田明教授による「太陽光発電の最新動向」の講演が行なわれました。

 冒頭、「主催者挨拶」の中で小谷専務理事は「2020年東京オリンピックに向け、政府は情報ネットワーク等の大きなインフラ整備を行なう。また、放送分野ではNHKによる新規プロジェクトも実施される。2020年までのオリンピック景気は、ある意味チャンスであり、そのチャンスを掴むか掴まないか、日本企業にとっては大きな意味を持つ。日頃から切磋琢磨して開発している技術をいかに適用して市場を掴んで行くか、それが今後4年間の光産業の進む道だ」と力強く述べました。少なくとも2020年までは光産業にとって追い風が吹き、その中でいかにチャンスを掴めるか、日本企業の力量が試されることになりそうです。

会場風景

会場風景

 「InterOpto」は「BioOpto Japn」、「Laser Tech」、「LED JAPN」(主催:JTBコミュニケーションデザイン)と「MEMSセンシング&ネットワークシステム展」(主催:マイクロマシンセンター、NMEMS技術研究機構、JTBコミュニケーションデザイン)と同時開催される「All about Photonics」の中の一つの展示会として開催されたのものです。
 今回の展示会では、浜松ホトニクスのフォトニック結晶面発光レーザーダイオードやシャープの3波長一体RGB小型レーザーモジュール、旭化成の高出力殺菌用新紫外LEDなどを含め、いくつもの注目技術が出展されていましたが、UV-LEDについてはウシオ電機、日機装技研、ナイトライド・セミコンダクター、日亜化学工業、豊田合成といった各社も出展していて、今のLED分野における一つのトレンドとの感がありました。
 なお、来年の「All about Photonics」は会場を幕張メッセに移し、10月の第1週に開催されるとのことです。

編集顧問:川尻多加志

 

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JASIS 2016に見るラマン顕微鏡

 9月7日(水)から9日(金)までの3日間、幕張メッセにおいて分析機器・科学機器総合展示会「JASIS 2016」が開催されました。展示会は出展社数も多く、非常に多岐にわたる分析機器・科学機器が出展されていました。光を応用した各種の測定・検査機器も非常に多く見受けられました。各社をざっと見て回るだけでも到底一日では無理という感じです。そこで、今回はラマン顕微鏡に的を絞って会場を歩いてみました。取材の後半、かなりばててしまったので見落としがあったらすみません。

(1)ナノフォトン◆ナノフォトン
 同社の新製品「RAMAN force」は顕微鏡を一体化。10倍、20倍といった低倍率対物レンズの空間分解能を限界まで向上させたとのこと。もちろん100倍での350nmという空間分解能は健在。室温の影響を受けにくい新構造ボディを採用して、画像ボケの原因となる測定中の試料ステージのドリフトをさらに軽減、1℃の環境温度変化に対するフオーカスのずれを50nm以下とした。独自のライン照明技術と高画素・電子冷却CCDを用いた400本のラマンスペクトル同時検出の採用によって、点照明とステージ走査を組み合わせた方式に比べ、数百倍という超高速ラマンイメージングを実現した。新開発の多機能ソフトウェアで分析スピードもさらにアップした。

(2)レニショー◆レニショー
 「inVia Qontor共焦点ラマンマイクロスコープ」に採用されている同社独自のリアルタイムフォーカストラッキング機能「LiveTrack」は、サンプルステージの高精度モーションコントロールに新規の光学テクノロジーを統合、サンプル観察や測定中にサンプルステージの高さを継続的に調節することでフォーカスを維持する。手間がかかって位置合わせが難しいプレスキャンが不要で、対物レンズでフォーカスを維持する方式に比べ、広い高さ範囲でのフォーカスが可能とのことだ。これにより、マニュアル操作での観察中もフォーカスが維持でき、曲面や粗面のサンプルも簡単に分析ができるという。さらに、サンプル加熱や冷却などのダイナミック測定や長時間にわたる観察中に環境が変化する場合でも、フォーカスの維持が可能になった。

(3)堀場製作所◆堀場製作所/堀場エステック
 顕微レーザーラマン分光測定装置「LabRAM HR Evolution」の測定波長域は、紫外から近赤外まで(200nm~2100nm)と広く、焦点距離800mmで高いスペクトル分解能を実現する高性能大型分光器を採用した。自動光軸調整機能も付いていて、0.5μm以下という高分解能を有している。一定のデータを保持してまとめて転送することでデッドタイムを省く超高速イメージング機構「SWIFT」や、可視光だけでなく深紫外から赤外までの波長領域でマッピング測定するイメージング機構「DuoScan」で3次元高速マッピングを実現したとのことで、レーザーやフィルター等の光学系をソフトウェアからコントロールする自動切替機構も搭載。豊富なアクセサリー装備が可能で、RAMAN-AFMやフォトルミネッセンス、透過ラマン、加熱冷却ステージ等、他のシステムと合わせた複合機を実現できる。

(4)サーモフィッシャーサイエンティフィック◆サーモフィッシャーサイエンティフィック
 同社の「DXR2」シリーズは、光軸を自動調整するオートアライメント・キャリブレーション機構(特許技術)を採用、励起レーザーからサンプル、サンプルから検出器までの二つの光軸を自動で最適化して、スペクトルの横軸・縦軸の校正も同時に実施できる。直感的でシンプルな操作性を有する「OMNIC」ソフトウェアによって、自動露光やスマートバックグラウンド、オートフォーカスなど、パラメーターを自動で最適化してくれるので、これまでシステム調整に必要とされていた熟練の技が不要になったとのこと。蛍光を発するサンプルに弱いというラマン分光法の弱点も、レーザー照射によるフォトブリーチング(蛍光退色)効果によって、その影響を軽減できる。オプションで偏光子と検光子を装置内に組み込むことができ、偏光測定も可能だ。

(5)東京インスツルメンツ◆東京インスツルメンツ
 同社の「Nanofinder FLEX」は「Nanofinder 30」3D顕微レーザーラマン分光装置の基本性能を備えた汎用品で、各ユニットをモジュール化したもの。ラマン光学ユニットは大幅に小型化して従来比1/6を実現、A4サイズで正立顕微鏡の上部に搭載する方式なので、設置床面積は光学顕微鏡1台分で済む。その他のユニット、レーザーと分光器/冷却CCD検出器も光ファイバーで接続するため設置場所を選ばない。励起レーザーを交換する時はラマン光学ユニットを交換するが、顕微鏡への取付は簡単とのこと。高空間分解能は300nm以下、十分な高感度を有し、操作性においても光学、光軸調整等は必要なく簡単に使用できる。ラマン光学ユニットおよびピエゾステージのコスト削減で装置全体価格の大幅な低価格化に成功した。ユーザーが手持ちのレーザーや冷却CCD/分光器を使用できるので、購入予算の一層の低減が可能としている。

(6)ニューメタルスエンドケミカルスコーポレーション◆ニューメタルスエンドケミカルスコーポレーション
 同社の「uRaman-M」は柔軟性の高いラマン分光器。低価格・コンパクトでありながら、ニコン、オリンパス、ライカ、ツワイス社製といったほとんどの正立顕微鏡に簡単に取り付けることができ、ハイエンドのラマン顕微鏡に劣らない高いラマン分析が可能とのこと。蛍光観察などの既存のイメージング機能に影響を与える心配もない。周波数安定化レーザーと高感度リニアアレー検出器を標準装備、用途に応じ532nm、633nm、785nmの3種類のレーザー波長が用意されていて、それぞれの分光器を重ねて組み込むことも可能だ。

(7)WITec◆WITec
 同社の共焦点ラマン顕微鏡「alpha300R」はフォトニックファイバーを用いた高S/N共焦点光学系と高スループットレンズ方式の分光器を組み合わせたラマン分光イメージングシステム。励起レーザーは532nmが標準で355nm~785nmまで対応、最大3光源まで切り替えることが可能だ。分光器の焦点長は300mm~600mmのレンズ方式で最大3グレーティング。明視野、暗視野、微分干渉、偏光観察に対応する。同社では、AFMを組み込んだ共焦点ラマン顕微鏡「alpha300AR」も扱っており、表面形状像とラマンイメージングによって資料評価の幅を広げて、様々なアプリケーションに対応する。

編集顧問:川尻多加志

 

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インフラやプラント・メンテナンスで期待を集める光センサー

 インフラやプラントは構造そのもののが巨大なため、例えばメンテナンスに必要な計測を行なう場合、その高さゆえ人手による作業が難しかったり、危険を伴うことも多々あります。そこで、離れた場所からでも非接触で計測できる光センシング技術に期待が集まっていて、実際その適用も進んでいるようです。
 先ごろ東京ビッグサイトで行なわれた「メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2016」でレーザーレーダーなど、いくつか興味深い光センサーを見つけましたので、ここで紹介したいと思います。

(1)ファロージャパン◆ファロージャパン
同社の小型・軽量レーザースキャナーは、工場を丸ごとスキャンして素早く簡単にデジタル化が可能。非接触式なので、複雑な配管のように人手による計測が困難な場所でも、天井クレーンのレール計測など、高所での作業を必要とする計測でも、安全な作業環境を確保しつつ、プラントや工場のレイアウト変更、3Dデジタル化、大型部品の形状解析に活用できる。高解像度で鮮明なカラーオーバーレイ(最大70メガピクセルカラー)を表示でき、最大測距距離は半径330m、重さ約5.2kg、サイズ24×20×10cmと小型・軽量なので持ち運びも簡単だ。

(2)英弘精機◆英弘精機
ドップラーライダーは、レーザーを出射して大気中に浮遊する塵など、エアロゾル粒子の後方散乱で得られるドップラーシフト信号から視線風速を計測する(同社のレーザーは波長1.54μm)。これをベクトル合成することで水平風速が算出でき、エアロゾル濃度が分かるので大気境界層や雲底の計測も可能だ。同社では各種ドップラーライダーを扱っているが、写真の3Dスキャニングドップラーライダーシステムは、上部に付いたスキャンヘッドで自由走査ができるので、機器を中心に半球状に風況計測が行なえる。陸上から洋上など、離れた場所から特定の場所の風況を知ることができ、測定範囲も容易に変更可能なので、風力発電の風車などのスキャンを行なって後方乱流を観測できる。計測範囲は3km、6km、10kmの3タイプがある。

(3)コニカミノルタ◆コニカミノルタ
3Dレーザーレーダーと可視/サーマルカメラ(MOBOTIX製)を組み合わせたセキュリティーソリューションを提案。クラス1の赤外レーザーを用いた3Dレーザーレーダーは、TOF(Time Of Flight)方式でリアルタイムに広範囲、かつ縦24ライン(水平120°、垂直15°)という隙間のないスキャンをすることで、高精度な3次元情報を取得できる。検出距離は反射率10%の場合で0.5~30m、実力値で200mまで検出可能ということだ。広い場所における侵入検知や人数カウント、動線分析や滞留分析などができ、フェンスセンサーなどとの組み合わせも可能。3Dレーザーレーダーは、重要なインフラやプラントを3D計測で常時監視して、災害発生による形状変化をいち早く把握することで被害の拡大を未然に防ぐという使い方もできる。

(4)アルゴ◆アルゴ
小型・軽量の全方位LiDARセンサーは、波長903nmのレーザーを16個用いたTOF方式の送受信センサーを内蔵、水平全方位360°、垂直視野30°の3Dイメージングが可能となっている。1秒間に300,000ポイントを測定し、測定精度約±3cm、測定距離は100mまで対応する。ヘッドの寸法は71.7×103.3mm、重量は標準型の830gと軽量型の590gの2タイプがある。車載、無人機、ポイント設置など、様々な3次元マッピングのアプリケーションに対応可能だ。GPSを必要としないリアルタイムローカライゼーション(自己位置測定)&マッピング(地図再生)ユニットを用いれば、ビルや橋梁、トンネル、道路などのインフラ検査維持管理や文化財などの3Dドキュメント作成を素早く低コストで行なうことができる。

(5)RSダイナミックス・ジャパン◆RSダイナミックス・ジャパン
外径50mmのスリムな形状で、地中孔内の空洞調査に最適な現場用3Dレーザースキャナー。プローブには2方向の傾斜計を内蔵、先端のレーザー部が水平、垂直方向に回転してレーザースキャンすることで、空洞の位置や形状を3Dデータとして正確に測定・記録することができる。クラス1のアイセーフレーザーを使用しており、測定距離は150m、測定精度は5cm、分解能1cm、スキャン速度は最大60°/秒、データスキャン速度は250点/秒というスペックになっている。プローブの先端部にLED付きカメラが装着されているので、プローブ周辺のモニタリングも可能。

編集顧問:川尻多加志

 

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濡れ手に粟から健全なビジネスへ

NEDOプロジェクトでは各種太陽電池の光電変換効率に関する世界記録を幾つも達成している(PV Japan2016でのNEDOブース)。

NEDOプロジェクトでは各種太陽電池の光電変換効率に関する世界記録を幾つも達成している(PV Japan2016でのNEDOブース)。

 東京商工リサーチが2016年上半期(1~6月)の太陽光関連事業者の倒産件数を発表しました。その数は31件、前年同期比で24%増で、2000年以降の上半期ベースで過去最高の倒産件数になりました。年間ベースで見ると過去最高は2015年の54件でしたが、2016年上半期ですでに2013年、2014年の各28件を抜いていて、過去2番目の数字になっています。

 負債総額は176億3,200万円(前年同期比18.6%増)でした。このまま行くと年間ベースで最多を記録した2015年の負債総額213億5,500万円を上回りそうです。
 負債額別で見てみると、1億円以上5億円未満が最多で14件(構成比45.1%)となっていて、次いで1千万円以上5千万円未満が7件(同22.5%)、5千万円以上1億円未満が6件(同19.3%)と続いています。
 これに対し2016年上半期に発生したすべての企業倒産4,273件の中では、1千万円以上5千万円未満が最も多く、構成比で53.6%を占めています。太陽光関連事業者の倒産は、設備への先行投資もあるので全業種よりも負債規模で大型化しやすい傾向にあるようです。 

 倒産を原因別で見てみると「販売不振」が最も多く16件(構成比51.6%)と半数を占め、次いで「事業上の失敗」が7件(同22.5%)、「運転資金の欠乏」と「既往のシワ寄せ」が各2件(同6.4%)と続いています。
 上半期発生のすべての企業倒産4273件の内では「事業上の失敗」の構成比は4.9%(211件)に過ぎません。これに比べると、太陽光関連事業者の「事業上の失敗」は突出しています。注目市場として規模拡大が見込まれ、一部企業が実現性を欠いた安易な事業計画で参入した結果、業績の見込み違いから倒産するケースが多いことを示していると思われます。

 太陽光発電協会の発表した「日本における太陽電池モジュールの出荷量」によれば、2015年度の太陽光パネルの国内出荷量は714万キロワット、前年度比で23%も減っています。5月には改正再生エネルギー特別措置法が成立して、認定制度と買い取り価格の設定方法も抜本的に見直されました。 

 フィード・イン・タリフ(FIT)導入の際、太陽光発電は他の再生可能エネルギーよりも高い買い取り価格で優遇されました。さらに、何故か発電時ではなく認定時で価格が決まるという制度も導入されました。それに加え計画から稼働までが短時間で済むために、メガソーラーの運営やソーラーシステム装置の販売、設置工事など、多様な形態で参入する企業が殺到、いわゆる太陽光バブルが起きました。
 しかし、それ以降の段階的な買い取り価格の引き下げや同業者の増加等によってバブルは終焉、太陽光発電ビジネスは冬の時代に入ったと言われていますが、見方を変えれば、これがビジネスの普通の姿であって、ようやくそこに戻って来たと言えるかもしれません。
 
 濡れ手に粟から健全なビジネスへ。これからは光電変換効率や長期信頼性といった、地道な研究開発にも皆の注目が集まることを期待したいものです。

編集顧問:川尻多加志

 

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