2020年までのチャンスを掴め

 9月14日(水)から16日(金)までパシフィコ横浜で開催された「InterOpto 2016」(主催:光産業技術振興協会)。初日と二日目には毎年恒例の「光技術動向セミナー」と「光産業動向セミナー」が開かれました。今年は「光技術動向セミナー」に参加して来ました。

「主催者挨拶」をする小谷専務理事

「主催者挨拶」をする小谷専務理事

 今年の「光技術動向セミナー」では、光産業技術振興協会の小谷泰久専務理事が「主催者挨拶」を行なった後、日本電信電話 未来ねっと研究所 フォトニックトランスポートネットワーク研究部の乾哲郎主任研究員による「光通信ネットワークの最新動向」、メルクの長谷川雅樹量子材料応用開発マネージャーによる「AR/VRと光技術応用ユーザインタフェースの最新動向」、産業技術総合研究所 フレキシブルエレクトロニクス研究センター 先進機能表面プロセスチームの山本典孝研究チーム長による「光有機材料・デバイスの最新動向」、沖電気工業 情報・技術本部 研究開発センタ ネットワーク・端末技術開発部の中村幸治主任研究員による「光無機材料・デバイスの最新動向」が続き、特別講演としては海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センターの川口勝義センター長代理が「光海底ケーブル技術を用いた観測システムと応用展開」を講演、続いて神戸大学 大学院システム情報学研究科 システム科学専攻の的場修教授による「情報処理フォトニクスの最新動向 − 光メモリ、光インターコネクション、光演算の最新技術 −」、レーザー技術総合研究所の藤田雅之主席研究員による「これからの光加工・計測、光医療のあり方 - その将来像とは -」、東京工業大学 工学院 電気電子系の山田明教授による「太陽光発電の最新動向」の講演が行なわれました。

 冒頭、「主催者挨拶」の中で小谷専務理事は「2020年東京オリンピックに向け、政府は情報ネットワーク等の大きなインフラ整備を行なう。また、放送分野ではNHKによる新規プロジェクトも実施される。2020年までのオリンピック景気は、ある意味チャンスであり、そのチャンスを掴むか掴まないか、日本企業にとっては大きな意味を持つ。日頃から切磋琢磨して開発している技術をいかに適用して市場を掴んで行くか、それが今後4年間の光産業の進む道だ」と力強く述べました。少なくとも2020年までは光産業にとって追い風が吹き、その中でいかにチャンスを掴めるか、日本企業の力量が試されることになりそうです。

会場風景

会場風景

 「InterOpto」は「BioOpto Japn」、「Laser Tech」、「LED JAPN」(主催:JTBコミュニケーションデザイン)と「MEMSセンシング&ネットワークシステム展」(主催:マイクロマシンセンター、NMEMS技術研究機構、JTBコミュニケーションデザイン)と同時開催される「All about Photonics」の中の一つの展示会として開催されたのものです。
 今回の展示会では、浜松ホトニクスのフォトニック結晶面発光レーザーダイオードやシャープの3波長一体RGB小型レーザーモジュール、旭化成の高出力殺菌用新紫外LEDなどを含め、いくつもの注目技術が出展されていましたが、UV-LEDについてはウシオ電機、日機装技研、ナイトライド・セミコンダクター、日亜化学工業、豊田合成といった各社も出展していて、今のLED分野における一つのトレンドとの感がありました。
 なお、来年の「All about Photonics」は会場を幕張メッセに移し、10月の第1週に開催されるとのことです。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: イベント情報 | コメントする

JASIS 2016に見るラマン顕微鏡

 9月7日(水)から9日(金)までの3日間、幕張メッセにおいて分析機器・科学機器総合展示会「JASIS 2016」が開催されました。展示会は出展社数も多く、非常に多岐にわたる分析機器・科学機器が出展されていました。光を応用した各種の測定・検査機器も非常に多く見受けられました。各社をざっと見て回るだけでも到底一日では無理という感じです。そこで、今回はラマン顕微鏡に的を絞って会場を歩いてみました。取材の後半、かなりばててしまったので見落としがあったらすみません。

(1)ナノフォトン◆ナノフォトン
 同社の新製品「RAMAN force」は顕微鏡を一体化。10倍、20倍といった低倍率対物レンズの空間分解能を限界まで向上させたとのこと。もちろん100倍での350nmという空間分解能は健在。室温の影響を受けにくい新構造ボディを採用して、画像ボケの原因となる測定中の試料ステージのドリフトをさらに軽減、1℃の環境温度変化に対するフオーカスのずれを50nm以下とした。独自のライン照明技術と高画素・電子冷却CCDを用いた400本のラマンスペクトル同時検出の採用によって、点照明とステージ走査を組み合わせた方式に比べ、数百倍という超高速ラマンイメージングを実現した。新開発の多機能ソフトウェアで分析スピードもさらにアップした。

(2)レニショー◆レニショー
 「inVia Qontor共焦点ラマンマイクロスコープ」に採用されている同社独自のリアルタイムフォーカストラッキング機能「LiveTrack」は、サンプルステージの高精度モーションコントロールに新規の光学テクノロジーを統合、サンプル観察や測定中にサンプルステージの高さを継続的に調節することでフォーカスを維持する。手間がかかって位置合わせが難しいプレスキャンが不要で、対物レンズでフォーカスを維持する方式に比べ、広い高さ範囲でのフォーカスが可能とのことだ。これにより、マニュアル操作での観察中もフォーカスが維持でき、曲面や粗面のサンプルも簡単に分析ができるという。さらに、サンプル加熱や冷却などのダイナミック測定や長時間にわたる観察中に環境が変化する場合でも、フォーカスの維持が可能になった。

(3)堀場製作所◆堀場製作所/堀場エステック
 顕微レーザーラマン分光測定装置「LabRAM HR Evolution」の測定波長域は、紫外から近赤外まで(200nm~2100nm)と広く、焦点距離800mmで高いスペクトル分解能を実現する高性能大型分光器を採用した。自動光軸調整機能も付いていて、0.5μm以下という高分解能を有している。一定のデータを保持してまとめて転送することでデッドタイムを省く超高速イメージング機構「SWIFT」や、可視光だけでなく深紫外から赤外までの波長領域でマッピング測定するイメージング機構「DuoScan」で3次元高速マッピングを実現したとのことで、レーザーやフィルター等の光学系をソフトウェアからコントロールする自動切替機構も搭載。豊富なアクセサリー装備が可能で、RAMAN-AFMやフォトルミネッセンス、透過ラマン、加熱冷却ステージ等、他のシステムと合わせた複合機を実現できる。

(4)サーモフィッシャーサイエンティフィック◆サーモフィッシャーサイエンティフィック
 同社の「DXR2」シリーズは、光軸を自動調整するオートアライメント・キャリブレーション機構(特許技術)を採用、励起レーザーからサンプル、サンプルから検出器までの二つの光軸を自動で最適化して、スペクトルの横軸・縦軸の校正も同時に実施できる。直感的でシンプルな操作性を有する「OMNIC」ソフトウェアによって、自動露光やスマートバックグラウンド、オートフォーカスなど、パラメーターを自動で最適化してくれるので、これまでシステム調整に必要とされていた熟練の技が不要になったとのこと。蛍光を発するサンプルに弱いというラマン分光法の弱点も、レーザー照射によるフォトブリーチング(蛍光退色)効果によって、その影響を軽減できる。オプションで偏光子と検光子を装置内に組み込むことができ、偏光測定も可能だ。

(5)東京インスツルメンツ◆東京インスツルメンツ
 同社の「Nanofinder FLEX」は「Nanofinder 30」3D顕微レーザーラマン分光装置の基本性能を備えた汎用品で、各ユニットをモジュール化したもの。ラマン光学ユニットは大幅に小型化して従来比1/6を実現、A4サイズで正立顕微鏡の上部に搭載する方式なので、設置床面積は光学顕微鏡1台分で済む。その他のユニット、レーザーと分光器/冷却CCD検出器も光ファイバーで接続するため設置場所を選ばない。励起レーザーを交換する時はラマン光学ユニットを交換するが、顕微鏡への取付は簡単とのこと。高空間分解能は300nm以下、十分な高感度を有し、操作性においても光学、光軸調整等は必要なく簡単に使用できる。ラマン光学ユニットおよびピエゾステージのコスト削減で装置全体価格の大幅な低価格化に成功した。ユーザーが手持ちのレーザーや冷却CCD/分光器を使用できるので、購入予算の一層の低減が可能としている。

(6)ニューメタルスエンドケミカルスコーポレーション◆ニューメタルスエンドケミカルスコーポレーション
 同社の「uRaman-M」は柔軟性の高いラマン分光器。低価格・コンパクトでありながら、ニコン、オリンパス、ライカ、ツワイス社製といったほとんどの正立顕微鏡に簡単に取り付けることができ、ハイエンドのラマン顕微鏡に劣らない高いラマン分析が可能とのこと。蛍光観察などの既存のイメージング機能に影響を与える心配もない。周波数安定化レーザーと高感度リニアアレー検出器を標準装備、用途に応じ532nm、633nm、785nmの3種類のレーザー波長が用意されていて、それぞれの分光器を重ねて組み込むことも可能だ。

(7)WITec◆WITec
 同社の共焦点ラマン顕微鏡「alpha300R」はフォトニックファイバーを用いた高S/N共焦点光学系と高スループットレンズ方式の分光器を組み合わせたラマン分光イメージングシステム。励起レーザーは532nmが標準で355nm~785nmまで対応、最大3光源まで切り替えることが可能だ。分光器の焦点長は300mm~600mmのレンズ方式で最大3グレーティング。明視野、暗視野、微分干渉、偏光観察に対応する。同社では、AFMを組み込んだ共焦点ラマン顕微鏡「alpha300AR」も扱っており、表面形状像とラマンイメージングによって資料評価の幅を広げて、様々なアプリケーションに対応する。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | コメントする

インフラやプラント・メンテナンスで期待を集める光センサー

 インフラやプラントは構造そのもののが巨大なため、例えばメンテナンスに必要な計測を行なう場合、その高さゆえ人手による作業が難しかったり、危険を伴うことも多々あります。そこで、離れた場所からでも非接触で計測できる光センシング技術に期待が集まっていて、実際その適用も進んでいるようです。
 先ごろ東京ビッグサイトで行なわれた「メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2016」でレーザーレーダーなど、いくつか興味深い光センサーを見つけましたので、ここで紹介したいと思います。

(1)ファロージャパン◆ファロージャパン
同社の小型・軽量レーザースキャナーは、工場を丸ごとスキャンして素早く簡単にデジタル化が可能。非接触式なので、複雑な配管のように人手による計測が困難な場所でも、天井クレーンのレール計測など、高所での作業を必要とする計測でも、安全な作業環境を確保しつつ、プラントや工場のレイアウト変更、3Dデジタル化、大型部品の形状解析に活用できる。高解像度で鮮明なカラーオーバーレイ(最大70メガピクセルカラー)を表示でき、最大測距距離は半径330m、重さ約5.2kg、サイズ24×20×10cmと小型・軽量なので持ち運びも簡単だ。

(2)英弘精機◆英弘精機
ドップラーライダーは、レーザーを出射して大気中に浮遊する塵など、エアロゾル粒子の後方散乱で得られるドップラーシフト信号から視線風速を計測する(同社のレーザーは波長1.54μm)。これをベクトル合成することで水平風速が算出でき、エアロゾル濃度が分かるので大気境界層や雲底の計測も可能だ。同社では各種ドップラーライダーを扱っているが、写真の3Dスキャニングドップラーライダーシステムは、上部に付いたスキャンヘッドで自由走査ができるので、機器を中心に半球状に風況計測が行なえる。陸上から洋上など、離れた場所から特定の場所の風況を知ることができ、測定範囲も容易に変更可能なので、風力発電の風車などのスキャンを行なって後方乱流を観測できる。計測範囲は3km、6km、10kmの3タイプがある。

(3)コニカミノルタ◆コニカミノルタ
3Dレーザーレーダーと可視/サーマルカメラ(MOBOTIX製)を組み合わせたセキュリティーソリューションを提案。クラス1の赤外レーザーを用いた3Dレーザーレーダーは、TOF(Time Of Flight)方式でリアルタイムに広範囲、かつ縦24ライン(水平120°、垂直15°)という隙間のないスキャンをすることで、高精度な3次元情報を取得できる。検出距離は反射率10%の場合で0.5~30m、実力値で200mまで検出可能ということだ。広い場所における侵入検知や人数カウント、動線分析や滞留分析などができ、フェンスセンサーなどとの組み合わせも可能。3Dレーザーレーダーは、重要なインフラやプラントを3D計測で常時監視して、災害発生による形状変化をいち早く把握することで被害の拡大を未然に防ぐという使い方もできる。

(4)アルゴ◆アルゴ
小型・軽量の全方位LiDARセンサーは、波長903nmのレーザーを16個用いたTOF方式の送受信センサーを内蔵、水平全方位360°、垂直視野30°の3Dイメージングが可能となっている。1秒間に300,000ポイントを測定し、測定精度約±3cm、測定距離は100mまで対応する。ヘッドの寸法は71.7×103.3mm、重量は標準型の830gと軽量型の590gの2タイプがある。車載、無人機、ポイント設置など、様々な3次元マッピングのアプリケーションに対応可能だ。GPSを必要としないリアルタイムローカライゼーション(自己位置測定)&マッピング(地図再生)ユニットを用いれば、ビルや橋梁、トンネル、道路などのインフラ検査維持管理や文化財などの3Dドキュメント作成を素早く低コストで行なうことができる。

(5)RSダイナミックス・ジャパン◆RSダイナミックス・ジャパン
外径50mmのスリムな形状で、地中孔内の空洞調査に最適な現場用3Dレーザースキャナー。プローブには2方向の傾斜計を内蔵、先端のレーザー部が水平、垂直方向に回転してレーザースキャンすることで、空洞の位置や形状を3Dデータとして正確に測定・記録することができる。クラス1のアイセーフレーザーを使用しており、測定距離は150m、測定精度は5cm、分解能1cm、スキャン速度は最大60°/秒、データスキャン速度は250点/秒というスペックになっている。プローブの先端部にLED付きカメラが装着されているので、プローブ周辺のモニタリングも可能。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | コメントする

濡れ手に粟から健全なビジネスへ

NEDOプロジェクトでは各種太陽電池の光電変換効率に関する世界記録を幾つも達成している(PV Japan2016でのNEDOブース)。

NEDOプロジェクトでは各種太陽電池の光電変換効率に関する世界記録を幾つも達成している(PV Japan2016でのNEDOブース)。

 東京商工リサーチが2016年上半期(1~6月)の太陽光関連事業者の倒産件数を発表しました。その数は31件、前年同期比で24%増で、2000年以降の上半期ベースで過去最高の倒産件数になりました。年間ベースで見ると過去最高は2015年の54件でしたが、2016年上半期ですでに2013年、2014年の各28件を抜いていて、過去2番目の数字になっています。

 負債総額は176億3,200万円(前年同期比18.6%増)でした。このまま行くと年間ベースで最多を記録した2015年の負債総額213億5,500万円を上回りそうです。
 負債額別で見てみると、1億円以上5億円未満が最多で14件(構成比45.1%)となっていて、次いで1千万円以上5千万円未満が7件(同22.5%)、5千万円以上1億円未満が6件(同19.3%)と続いています。
 これに対し2016年上半期に発生したすべての企業倒産4,273件の中では、1千万円以上5千万円未満が最も多く、構成比で53.6%を占めています。太陽光関連事業者の倒産は、設備への先行投資もあるので全業種よりも負債規模で大型化しやすい傾向にあるようです。 

 倒産を原因別で見てみると「販売不振」が最も多く16件(構成比51.6%)と半数を占め、次いで「事業上の失敗」が7件(同22.5%)、「運転資金の欠乏」と「既往のシワ寄せ」が各2件(同6.4%)と続いています。
 上半期発生のすべての企業倒産4273件の内では「事業上の失敗」の構成比は4.9%(211件)に過ぎません。これに比べると、太陽光関連事業者の「事業上の失敗」は突出しています。注目市場として規模拡大が見込まれ、一部企業が実現性を欠いた安易な事業計画で参入した結果、業績の見込み違いから倒産するケースが多いことを示していると思われます。

 太陽光発電協会の発表した「日本における太陽電池モジュールの出荷量」によれば、2015年度の太陽光パネルの国内出荷量は714万キロワット、前年度比で23%も減っています。5月には改正再生エネルギー特別措置法が成立して、認定制度と買い取り価格の設定方法も抜本的に見直されました。 

 フィード・イン・タリフ(FIT)導入の際、太陽光発電は他の再生可能エネルギーよりも高い買い取り価格で優遇されました。さらに、何故か発電時ではなく認定時で価格が決まるという制度も導入されました。それに加え計画から稼働までが短時間で済むために、メガソーラーの運営やソーラーシステム装置の販売、設置工事など、多様な形態で参入する企業が殺到、いわゆる太陽光バブルが起きました。
 しかし、それ以降の段階的な買い取り価格の引き下げや同業者の増加等によってバブルは終焉、太陽光発電ビジネスは冬の時代に入ったと言われていますが、見方を変えれば、これがビジネスの普通の姿であって、ようやくそこに戻って来たと言えるかもしれません。
 
 濡れ手に粟から健全なビジネスへ。これからは光電変換効率や長期信頼性といった、地道な研究開発にも皆の注目が集まることを期待したいものです。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート, 未分類 | コメントする

進化するデジタルサイネージ

 デジタルサイネージを街で見かけるのは、今や当たり前。もはや映像をただ映しているだけでは、人々にアピールすることが難しくなっている。デジタルサイネージには今、さらなる訴求力が求められている。実際、デジタルサイネージは着実に進化を遂げている。
 幕張メッセで開催された「デジタルサイネージジャパン2016」では、その片鱗を垣間見ることができた。いくつかを紹介する。

1.パナソニック 2.七彩
◆パナソニック
 パナソニックの7Dimensionsは、140面のモニターで構成される7本の柱で映像と音響空間を創り出す。見る位置・方向によって全く違った空間の表情を見せる7本の柱が、未知の空間を演出する。Milano Design Awards 2016の「ピープルズチョイス賞」を受賞した。
◆七彩
 七彩は、早稲田大学メディアデザイン研究所と共同でインタラクティブマネキンを開発、顔の部分に様々な映像が投射できる。
カメラを使って自分の顔を映すこともできるので、例えばマネキンが着ている服が自分に似合うかといったことも試せる。

 

3.ピーディーシー 4.アスカネット
◆ピーディーシー
 ピーディーシーの8Kサイネージコンテンツ制作配信システムは、一般写真から8KのCG動画を自動生成してクラウド配信を行なうというもの。業界初とのことだ。
◆アスカネット
 アスカネットのエアリアルイメージングプレート(AI Plate)は、直行する二つの鏡面が光を反射することで像を形成する空中表示デバイス。専用メガネを必要とせず、デジタルサイネージの他、車載用ヘッドアップディスプレイや暗証番号入力パネル、次世代のITデスクなどへの適用が期待できるとしている。

 

5.ニューフォリア 6.E3 Blue Media
◆ニューフォリア
 ニューフォリアの55インチの透過型有機ELディスプレイは透過率が45%。フルハイビジョン映像によって未来的な雰囲気を演出する。
◆E3/Blue Media
 E3/Blue MediaのLCD透過型ディスプレイを用いたホロー・ディスプレイボックス。画面サイズは46インチで、フルハイビジョン映像を映し出す。タッチタイプとノンタッチタイプの2種類があり、オーダーメイドでユーザーに提供する。22インチと32インチの4面型もある。

 

7.プロテラス 8.マスプロ電工
◆プロテラス
プロテラスの液晶ディスプレイ内蔵ミラーサイネージは、サイズが600×600×1800mm。
街中などで自分の姿を映して身だしなみをチェックしている時、提供したい情報を映し出せる。
◆マスプロ電工
マスプロ電工の65V型のグラスレス3D対応4Kディスプレイ。3D表示の視野角は上下40度、左右140度、28視点での自然な3D表現を実現した。3D効果で訴求力アップができる。

  

9.三菱電機◆三菱電機
三菱電機は、ニューヨーク・タイムズスクエア地区に建つマリオットマーキーズホテルの外壁に総幅延長100mを超える4Kフルハイビジョン対応のオーロラビジョンを納入した。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | コメントする

いつでも・どこでも・だれでもレーザー

写真提供:ImPACT佐野雄二PM

写真提供:ImPACT佐野雄二PM

 去る6月13日(月)、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)主催によるImPACTプログラム「ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿命社会の実現」第2回シンポジウムが、JST東京本部別館ホールにおいて開催されました。

 レーザーは、研究開発分野から産業分野まで幅広く応用されていて、数多くの成果も上げています。しかしながら、まだまだ装置が大きく取り扱いが容易でないものも多いため、より幅広い分野への適用が妨げられていると言っても良いでしょう。

 本プログラムは、佐野雄二プログラムマネージャー(PM)のもと、大型の高出力パルスレーザーを手のひらサイズまで超小型化する技術や、究極の光といわれ世界にまだ二つしかないX線自由電子レーザーを超小型化する技術を確立することで、レーザーをいつでも・どこでも・だれでも使えるようにして、新技術・新産業を創出することを目的としたものです。

 高出力パルスレーザーは、材料の材質改善や曲面形成が可能であり、構造物の寿命延長や製造工期の短縮、さらには3Dプリンターのような新たな加工・成形技術への展開も可能と注目を集めています。しかしながら、その装置は大型でかつ高額なために産業界への普及は十分とは言えず、さらに主要な技術・装置部品が海外勢に押さえられているため国際競争力に欠けるのというのが現状です。
 そこで、本プログラムでは日本独自の技術であるマイクロチップレーザー技術やセラミックレーザー媒質と高出力半導体レーザー(LD)の融合によって、高出力パルスレーザーの超小型化を目指した研究開発を行ない、ユーザーと一体となったニーズドリブンの開発で超小型化したレーザーを産業に展開するとともに、日本が遅れをとっている高出力レーザー装置・システムのシェア奪還を目標に掲げています。

 一方のX線自由電子レーザー(XFEL)は、原子レベルの構造をフェムト秒の時間分解能で観察することが可能で、創薬(膜タンパク質の構造解析)や触媒(化学反応時のダイナミクス)等、多くの研究開発分野で有用な最先端の研究開発基盤です。
 ただ、この装置は現状では世界で二つしかありません(国内では播磨の一ヶ所)。当然、装置を利用できるユーザーは限られてしまい、利用できる機会は多くて年2回とも言われています。我が国が研究や技術・製品開発で世界との競争で勝つためには、より多くのユーザーがXFELをいつでも使えるようにする必要があります。
 本プログラムでは、現在700mもあるXFELをレーザープラズマ加速技術やマイクロアンジュレーター技術によって約10mまで超小型化、トレーラーに乗せていつでもどこでも使えるようにする事を目標に掲げています。また、超小型化をいち早く実現する事で圧倒的優位性を確保するとともに、開発技術や装置を海外にも展開、日本発の技術として標準化を図り、さらには、その技術を既存の加速器や放射光施設へ展開することで、施設の性能向上に寄与するとともに、日本の科学技術力や産業競争力を強化するとしています。

(プログラムの詳細は下記をクリック)
http://www.jst.go.jp/impact/sano/program/index.html

 プログラムがスタートして約1年半、レーザー電子加速における加速長の短縮化技術やマイクロチップレーザーの高出力化など、大きな成果が得られています。今回のシンポジウムは、その現況や成果報告の他、出席者から多くの意見を得てプログラムへフィードバックするため開催されたものです。

 当日はあいにくの雨。にもかかわらず会場はほぼ満席で約150名が出席、人々の関心の高さが窺われました。先ずは、佐野雄二PMが開会挨拶、続いて登壇した久間和生総合科学技術・イノベーション会議議員は来賓挨拶の中で、ImPACT制度の説明を行ないつつ、これまではICTをベースとしたイノベーションが日本の弱みであったが、今後は世界に先駆けた超スマート社会を目指すソサイティー5.0を実現すると述べ、佐野プログラムには大いに期待すると述べていました。プログラムの概要・進捗報告で再登場した佐野雄二PMは、報告の中でXFELについて当初予定より2年前倒しで実験を行なうと発表しました。

 その後のシンポジウムは第1部、第2部、第3部の3部構成で進められました。

 第1部は「レーザー加速XFEL実証プロジェクト」です。「放射光・XFEL施設の現状と将来」と題する招待講演を行なったのは、石川哲也理化学研究所放射光科学総合研究センター長。放射光施設SPring-8のエコタイヤ応用を例に挙げ、全てのタイヤがエコタイヤになれば、年間8,000億円ものガソリン代節約になるという試算を紹介していました。また、XFEL施設SACLAに用いられている国産部品の比率98%を、次世代型では100%にすると述べるとともに、リング型光源技術は限界に近づいて来ており、最終的な光源の姿はパルス発振とCW発振のX線レーザーになると指摘しました。

 続く「レーザー加速統合プラットホームの開発」を報告した兒玉了祐大阪大学教授/光科学センター長は、レーザープラズマ加速技術やマイクロアンジェレーター技術を用いて、これまで20~50mもあった電子加速器を1mまで小型化できたと述べました。その後、細貝知直大阪大学准教授は「レーザー加速技術の開発」を報告し、加速エネルギーはまだ小さいが世界で最も安定な電子加速が実現できており、今年度中に1GeVまでの加速にチャレンジすると述べました。神門正城量子科学技術研究開発機構グループリーダーは「レーザー加速場のリアルタイム計測技術」の最新成果を報告し、この技術でレーザーや電子ビームを制御し、さらに安定な電子加速を目指すと述べました。

 第2部は「超小型パワーレーザープロジェクト」です。「青色半導体レーザー積層技術とパルスレーザーへの期待」と題する招待講演を行なった塚本雅裕大阪大学准教授は、SIPの次世代レーザーコーティングプロジェクトを報告。時代はレーザークラッディングから高度化したレーザーコーティングへ向かうとして、青色半導体レーザーでアルミニウムに銅をコーティングした事例を紹介。パルスレーザーを用いたCFRP加工にも触れていました。

 続いて「マイクロチップレーザーの開発」を報告した平等拓範分子科学研究所准教授は、メガワット級のマイクロチップレーザーを用いたエンジン向け点火システムを紹介しました。放電型の点火プラグをレーザーによる点火プラグに置き換えることによりエンジン燃焼効率の向上が見込まれます。平等准教授は、Yb-YAGからNd-YAGロッドへ回帰すると指摘するとともに、いつでもどこでものユビキタス化を目指して、次世代の高輝度マイクロチップレーザーは高繰り返し化、波長域の拡大、ギガワットからテラワットへの高エネルギー化が重要と述べました。

 「高出力小型パワーレーザーの開発」を報告した川嶋利幸浜松ホトニクスグループ長は、セラミックを用いたテーブルトップ型の高出力小型パワーレーザーを紹介。プロジェクトは2015年の夏にスタート、2018年まで続ける予定です。すでに300~500Wの励起用高出力LDバー・スタックの開発に成功しており、この夏には100mJ、繰り返し率300Hzを達成する計画で、今年度中にはパルスで1Jを目指すと述べていました。

 第3部の「超小型レーザーの応用展開」では、先ずは浅井知大阪大学教授が「超小型パワーレーザによる革新的スマート溶接システムの開発」を報告しました。溶接の80%は未だアーク溶接で、現状では検査や補修などの厄介な特殊工程が必要だそうです。浅井教授は、溶接中に検査をして品質の制御・保証を行なう自動溶接システム(インプロセス溶接)が必要と述べ、レーザーをセンサーとして用いるレーザー超音波法やレーザーでアーク誘導を行なう溶接法、レーザーピーニングなどを紹介。マイクロチップレーザーを用いれば検査装置を小型化でき溶接ロボットと一体化できるため、大型装置が置いてある現場に持って行き溶接と検査が同時にできるようになると述べていました。

 高橋一哲ユニタック副社長は「超小型皮膚疾患用ピコ秒レーザー治療器の開発」を報告しました。波長1064nmや532nmnのマイクロチップピコ秒レーザーによる光音響効果を用いて、刺青や色素性病変を治療するというものです。従来のピコ秒レーザーは大型で、価格も3,000万円と高額なため、治療に際して患者負担が大きく、さらに国産の装置も少ないというのが現状です。高橋副社長は、大きさが310×330×212mmで重さも12kgというテーブルトップ型を実現するとともに、価格も一桁下げたいと述べていました。

 「航空機構造部材のレーザーピーンフォーミング技術の開発」を報告したのは、政木清孝沖縄工業高等専門学校准教授です。航空機の主要部材がアルミ合金からチタン合金に移っていく中、これまでの機械加工では加工箇所において曲がりや反りが大きくなってしまい、その矯正にも時間と手間がかかるという問題があります。政木准教授は、浜松ホトニクスグループが開発中の高出力パワーレーザーを使用したレーザーピーンフォーミングにより、省力化と強度向上の両立が可能になると述べていました。

 最後の発表、南出泰亜理化学研究所チームリーダーによる「セキュリティ応用に向けたテラヘルツ波センシング技術の開発」は、平等拓範准教授による「マイクロチップレーザーの開発」のなかで実施していましたが、今期から新たに独立したテーマです。マイクロチップレーザーとニオブ酸リチウムを用いたテラヘルツパラメトリック発振により、従来をはるかに凌ぐ強度のテラヘルツ波の発生と高い検出感度を達成しました。テラヘルツ波で特定の物質の指紋スペクトルを検出することにより、テロ対策といったセキュリティー分野で役立てようというものです。

 閉会の挨拶で佐野雄二PMは、アイデア公募で採択された現在の9件に加え、今年の9月から10月にかけて、システム化の公募に加えて次のアイデア公募を行なうとともに、マイクロチップレーザーの製品化公募も行なうとして、新しい提案をぜひ待っていると述べていました。

 シンポジウム終了後、会場を変えて行なわれた意見交換会には、佐野雄二PMや久間和生総合科学技術・イノベーション会議議員の他、講演者を含め、会場がたいへん狭く感じられるくらいの多数の方が出席、活発な意見交換を交わしていました。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | コメントする

ドローンの高機能化を支える光技術

 様々な分野で活躍が期待されているドローン。この4月後半、幕張メッセで開催された第2回国際ドローン展でも多種多様のドローンが展示されていましたが、ドローン用のレーザーレーダーや高機能センサーといった光デバイスや、はたまたこんな使い方もあるのかといったものなど、ちょっと面白いものを幾つか見かけたので紹介したいと思います。

NTT東日本◆NTT東日本では、設備資材や災害復旧用物資などの運搬に用いるドローンを試作しました。確かにこういう使い方もありますよね。ケーブルドラムを運搬して直接通信ケーブルを敷設するのに使うそうです。
 最大積載量は20kgで、メタルケーブル200m(1ドラム分:約9kg)や光ケーブル500m(1ドラム分:約10kg)を運搬します。2枚一組のローターを4機備え、ボディーは直径30mmのカーボンフレームで出来ています。

自律制御システム研究所◆自律制御システム研究所のmini surveyorは、自らが考えて飛行する(自律飛行)ドローンです。レーザーセンサーやカメラセンサー、GPSなどのセンサー情報を複合させ、独自のアルゴリズムで位置・速度を求めて飛行制御に用いているので、橋梁の下など、GPSが利用できない環境でも安定な自律飛行ができるということです。撮影にはレーザーセンサーを用いたレーザーオートフォーカスを採用しています。撮影対象までの距離がすぐに分かるので、画像の位相差やコントラストを用いた一般のデジタルカメラのオートフォーカスに比べ、周りの明かりが暗い時でもピント合わせの精度が落ちることなく、素早く焦点を合わせることができるそうです。

NEC◆NECが研究開発中なのが可視光通信を用いたドローン固体識別システム。LEDタグを搭載したドローンとの可視光通信によって不正なドローンを識別して、イベントでの安全・安心をサポートします。複数のドローンが飛び交う環境でも、モニターには識別された不正ドローンが視覚的に分かるよう表示されます。可視光通信は、電波干渉を受けにくく、セキュリティー上無線通信が使えないような環境でも使用することができます。電波法の規制を受けないので設置が容易というのもメリットに挙げられます。

コーンズテクノロジー◆コーンズテクノロジーが取り扱うFLIR Systemsの赤外線カメラは、リーズナブルな価格で、かつ小型・軽量なのでドローン搭載に適しているとのことです。対応のmini-USBケーブルを接続するだけで電源がオン、アナログビデオ出力ができます。非冷却式VOxマイクロボロメーターを採用していて、解像度は640×512ピクセルと336×256ピクセルの2種類、スペクトル幅は7.5~13.5μm、フルフレームレートは30Hz(NTSC)と25Hz(PAL)で、寸法は2.26×1.75インチ、重量は90~115gというスペックになっています。
 

北陽電機◆北陽電機が参考出品したドローン用測域センサー、Smart-URGは二つのミラーユニットが付いているのが特長。このミラーで水平・垂直を同時にスキャンします。波長905nmの半導体レーザーを用いていて、垂直方向を十字にスキャンして地面までの距離を測ります。スキャン角度は水平方向が190度、垂直方向30度、計測距離は15m(暫定値)で、測定精度は±4cmとなっています。190g以下という軽量化も実現しました。寸法はミラーを含めて156×70mm。水平方向にある障害物との衝突防止や着陸時に地面と衝突するのを防いでドローンを守ってくれます。

アルゴ◆アルゴの全方位レーザー・イメージングユニット、Velodyne LiDARは波長903nmの16個のレーザー送受信センサーを内臓しており、水平方向360度、垂直方向30度の3Dイメージングを可能にしました。1秒間に30万ポイントを測定でき、測定精度は約±3cm、測定距離は100mまで対応します。ヘッド寸法は103.3×71.7mm、重量は標準で830g、軽量版で590gとなっています。ドローンの他、自動車やロボットなどにも搭載でき、三次元マッピング用途に屋内外で使用できるとのことです。

◆写真は取れなかったのですが、ジェピコはQuanergy Systemsの3D LiDARセンサーを出展しました。波長905nmの8個のレーザー送受信センサーを搭載していて、水平方向360度、垂直方向20度、測定精度は3cm以下、測定距離は150mまでで寸法は102×86mm、重量900gというスペックになっています。

 ドローンは飛行性能ももちろん重要ですが、何を載せるかでその用途はさらに拡大して行くはずです。その意味で、光技術を用いたデバイスは非常に重要な意味合いを持っていて、いわばドローン普及・発展の縁の下の力持ちの役割を担っていると言えそうです。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | コメントする

Japan Prize授賞式、天皇皇后両陛下をお迎えして開催される ‐受賞者は細野秀雄博士とスティーブン・タンクスリー博士‐

 Japan Prize(日本国際賞)は、世界の科学技術分野で独創的な成果を上げ、人類の平和と繁栄に貢献する著しい業績をあげた科学者に授与されるものです。科学技術の全分野を対象に、毎年二つの分野を授賞対象分野に指定して、科学技術の進歩に対する貢献のみならず、私達の暮らしに対する社会的な貢献も含めて選定されます。
 同賞はもともと、国際社会への恩返しとして全世界の科学者を対象にした国際的な賞の創設を打ち出した日本政府の構想に、松下電器産業の創業者・松下幸之助氏が寄付を持って応え1982年に実現したもの。記念すべき第1回授賞式は1985年に行なわれました。

そのJapan Prizeの2016年(第32回)授賞式が4月20日(水)、天皇皇后両陛下のご臨席のもと、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で盛大に行なわれました。
 今回の対象分野は「物質、材料、生産」と「生物生産、生命環境」の2分野。「物質、材料、生産」分野では、材料科学の新領域を次々と開拓して産業の発展に貢献した細野秀雄博士(日本)が、もう一方の「生物生産、生命環境」分野では、ゲノム解析により作物育種を「経験と勘」から「科学」に高め、食糧の安定生産に寄与したスティーブン・タンクスリー博士 (米国)が受賞しました。両氏にはそれぞれ賞状と賞牌、賞金5,000万円が贈られました。

細野博士

細野博士

 細野秀雄博士は1953年の生まれで、東京工業大学元素戦略研究センター長兼同大学応用セラミックス研究所の教授。ナノ構造を活用した画期的な無機電子機能物質・材料の創製の業績が認められ、今回の受賞となりました。

 ガラスのような「透明な酸化物」は電気を通さないため、これまでは電子機能材料には不向きとされていました。これに対し細野博士は、そのナノ構造を研究することによって「透明アモルファス酸化物半導体」を開発。これは現在、液晶や有機ELディスプレイなどに幅広く用いられています。博士はさらに、超伝導物質にはならないとされていた鉄系化合物で高い超伝導転移温度も達成、典型的な絶縁体と考えられてきた物質のナノ構造を改変することによって「電気を通すセメント」を開発するなど、画期的な無機電子機能物質・材料を次々と生み出してきました。

タンクスリー博士

タンクスリー博士

 スティーブン・タンクスリー博士は1954年生まれで、コーネル大学の名誉教授です。ゲノム解析手法の開発を通じた近代作物育種への貢献が認められました。

 これまで経験と勘と偶然に頼ってきた農作物の品種改良は、ゲノム解析技術の進展によって急速に進歩しましたが、タンクスリー博士は、ゲノム解析により作物の染色体地図を作成、その後、果実の大きさなど農業の生産性に関連した遺伝子を同定するなど、品種改良に役立つゲノム解析手法を開発しました。博士の研究がもたらしたゲノム情報と育種技術の融合は、優れた形質を持つ作物の選択精度を高め、求められる作物の計画的育種と費やされる時間の短縮に大きく貢献しました。
 
 
 

受賞者を祝福される天皇皇后両陛下

受賞者を祝福される天皇皇后両陛下

 今回の式典は、天皇皇后両陛下ご臨席のもと、各界を代表する方々や学界、財界などの関係者ら約1,000名が出席しました。授賞式の後には東京藝術大学シンフォニー・オーケストラによる記念演奏会が催されましたが、演奏された曲は両博士のリクエストだったそうです。また、翌日夕刻からは東京工業大学蔵前会館(東京都目黒区大岡山)で、一般の人を対象にした両博士の受賞記念講演会も開かれました。
 
 なお、来年の受賞対象分野は「物理、化学、工学」領域からは「エレクトロニクス、情報、通信」分野が、「生命、農学、医学」領域からは「生命科学」分野が選ばれています。フォトニクス分野の研究者のさらなる受賞を期待したいところです。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | コメントする

ナノ量子情報エレクトロニクスによるイノベーションに期待

 平成18年度から進められてきた文部科学省・先端融合領域イノベーション創出拠点の形成プログラム「ナノ量子情報エレクトロニクス連携研究拠点」が今年度で終了します。
 2月29日(月)と3月1日(火)の両日、研究開発を推進して来た東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構が、東京大学の本郷・伊藤謝恩ホールにおいてプロジェクトの成果報告シンポジウムを開催、10年間にわたる研究成果を披露しました。

 このプロジェクトは、将来のグリーンで安全なユビキタス情報社会の実現に向けて、超ブロードバンド、超安全性、超低消費電力を備えた情報システム基盤技術確立に立ち向かうことを目標に、産業界と協働して量子ドットを中心としたナノ技術、量子科学、ITの先端領域の融合を図ることで不連続的な技術革新を成し遂げ、イノベーションの創出を図ることをミッションとしています。
 海外を含めた東大以外の研究者とも強い連携を図り、内外に開かれた世界拠点の形成を目標とし、協働企業としては発足当初からシャープ、日本電気、日立製作所、富士通研究所が参画、21年度からはQDレーザも加わり、イノベーション創出のための体制が構築されました。

 研究推進母体の研究機構は、研究部門として(1)次世代ナノエレクトロニクス研究開発(2)量子情報エレクトロニクス研究開発(3)ナノ量子エレクトロニクス基盤技術研究の3部門を有し、四つの東大企業ラボ(シャープ、日本電気、日立製作所、富士通研究所)も設置、国際連携についてはスタンフォード大学、ミュンヘン工科大学、ケンブリッジ大学との融合研究も進められました。

五神真総長

五神真総長

 初日のオープニングセッション冒頭、拠点総括責任者である五神真東京大学総長が挨拶に立ち、プロジェクト10年間の取り組みと成果の概要を紹介するとともに「本機構は来年度以降も産学官連携の拠点として引き続き活動を推進する」として、昨年10月に発表した『東京大学ビジョン2020』実現に向け「今後とも研究機構の活動に対し温かいご支援を」と述べました。

 続いて登壇した来賓、寺崎智宏文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課企画官は「先端融合プログラムは行政にとってもチャレンジングなプログラムだった。世界と闘い続けた10年のその次のステージでの戦いが始まっている。今後とも独創的な成果が継続的に創出されることを期待するとともに、産業界が一丸となって拠点の成果をもとに世界に挑んでほしい」と挨拶をしました。

荒川泰彦機構長

荒川泰彦機構長

 オープニングセッション最後は、統括担当の荒川泰彦機構長による「産学官連携によるイノベーションの創出~成果と今後の展望~」と題する総括講演。
 先端融合プログラム発足前夜の我が国における科学技術プロジェクトの状況や研究拠点設立からこれまでの経緯、組織構成や活動の紹介、研究開発成果である量子ドットレーザーを用いたレーザーアイウェア(レーザー網膜操作型ウェアラブルグラス)や光インターコネクション、ナノワイヤ単一光子源を用いた量子暗号通信、量子ドット太陽電池、量子ドット光センサ等の紹介を行ないました。
 荒川機構長は拠点の今後の展開について「機構は引き続き活動を行なっていく。AIやIoTの台頭によって、これまでは下支えであったITが社会の革新を担うという雰囲気が出てきている中、ナノ量子情報エレクトロニクス融合によるイノベーションに期待したい。これは終わりではなく、次の始まりだ」と述べていました。

江崎玲於奈理事長

江崎玲於奈理事長

 夕刻にはシンポジウムの目玉、特別セッションも行なわれました。1本目がノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈茨城県科学技術振興財団理事長によるスピーチです。
 江崎理事長は「将来は現在の延長線上にない」と述べるとともに、研究者の想像力喚起を促す原動力として(1)競争的環境の中で行なわれる研究成果を的確に公表し、そこで受ける厳しい評価、忌憚の無い鋭い批判を真摯に受け止め研究の更なる発展に資する(2)創造の触媒となる他者との活発な知的交流(3)伝統から抜け出し、自由で境界を無視する大胆さ。虚心坦懐(candor)、先入観にとらわれることなく、研究対象のコアを捉え、限界に挑戦する意欲、の三つを挙げていました。

久間和生議員

久間和生議員

 特別セッション2本目は、久間和生内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員による「『第5期科学技術基本計画』の概要-超スマート社会の実現に向けて-」と題する特別講演。
 久間議員は、我が国の科学技術政策におけるプロジェクト推進に対する考え方の転換(プロデュサー制の採用)を解説するとともに、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)と革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の全体像と新しく追加されたテーマを披露。
 28年度からスタートする第5期科学技術基本計画については、これまで文部科学省が行なっていた策定を、初めて内閣府・イノベーション会議(SCTI)が行なったと紹介。さらに、求められる価値が「モノの性能、コスト、品質」から「システム・サービス」による価値へ変化しつつあることを捉え、基本計画の第2章「未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組」の中で、世界に先駆けた『超スマート社会(Society 5.0)の実現』を目標に掲げたと述べ、最後は「ナノ量子情報エレクトロニクスが『Society 5.0』の実現に貢献することを期待する」と締めくくりました。

 二日間にわたって行なわれた今回のシンポジウムでは、東京大学だけでなく、慶応義塾大学、京都大学、上智大学、東京工業大学、神戸大学などを含めた研究拠点メンバーが10年間にわたって進めてきた研究開発成果を報告。このほか上述の協働企業、シャープ、日本電気、日立製作所、富士通研究所、QDレーザの共同研究開発成果も紹介され、まさに我が国におけるナノ量子情報エレクトロニクス研究開発の最前線に触れることができた充実のシンポジウムでした。

 なお、ここでは発表メンバー全員を紹介できなかったので、詳しい情報については下記をご参照ください(京都大学は浅野卓先生が野田進先生の代理で講演されました)。

ナノ量子情報エレクトロニクス連携研究拠点
成果報告シンポジウム

http://www.nanoquine.iis.u-tokyo.ac.jp/finalreport/program.html

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | コメントする

光加工・計測技術のインパクト

第31回櫻井健二郎氏記念賞受賞者 (前列左から)小林功郎記念賞委員長代理、平野正晃氏、佐藤俊一氏、小谷泰久専務理事 (後列左から)川口雄揮氏、田村欣章氏、山本義典氏、 軸谷直人氏、原坂和宏氏、伊藤彰浩氏

第31回櫻井健二郎氏記念賞受賞者
(前列左から)小林功郎記念賞委員長代理、平野正晃氏、佐藤俊一氏、小谷泰久専務理事
(後列左から)川口雄揮氏、田村欣章氏、山本義典氏、 軸谷直人氏、原坂和宏氏、伊藤彰浩氏

 我が国のもの作りを支える光加工技術にいま、3Dプリンターや精密微細加工技術を用いた新たな展望が拡がろうとしています。また、光計測技術の医療・健康、宇宙分野等への応用は新しいイノベーションを生み出すと各方面より注目が集まっています。

 そんな中、リーガロイヤルホテル東京で2月3日(水)に開かれた「光産業技術シンポジウム」(光産業技術振興協会と光電子融合基盤技術研究所の共催)。
今年のテーマはまさに「光加工・計測が創る新たな社会と産業イノベーション」で、太陽系外惑星検出、3Dプリンター、X線自由電子レーザー(XFEL)やパワーレーザーの超小型化といった光加工・計測技術の最新の情報と将来展望が紹介されるとともに、ICTの鍵を握る光電子集積技術に関しても、その最新動向と将来展望が紹介されました。当日のプログラムは以下の通りです。

◆開会挨拶:光産業技術振興協会 専務理事 小谷泰久氏
◆来賓挨拶:経済産業省商務情報政策局デバイス産業戦略室 室長 田中邦典氏

<基調講演>
太陽系外惑星直接検出のための技術開発
   室蘭工業大学 理事・副学長 馬場直志氏

<招待講演>
3Dプリンターとその最新動向
   アスペクト 代表取締役社長 早野誠治氏
超小型パワーレーザーの開発と産業への応用
   内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT) プログラム・マネージャー 佐野雄二氏
光テクノロジーロードマップ~光加工・計測技術
   レーザー技術総合研究所 主席研究員 藤田雅之氏
光電子集積技術に関する開発動向及び技術ロードマップ2015
   新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 統括研究員 吉木政行氏

<講演>
超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発
 ~アクセスネットワーク向けシリコンフォトニクス

   光電子融合基盤技術研究所(PETRA) 佐々木浩紀氏

 以下、内容を簡単に紹介しますと「太陽系外惑星直接検出のための技術開発」を講演した室蘭工大の馬場氏は、地球型惑星の直接観測には地上においても宇宙空間においてもハイ・コントラストな撮像法が求められ、その実現には極限補償光学、広帯域・ハイスループット化、ハイパー望遠鏡の建設が重要と述べました。

 「3Dプリンターとその最新動向」を講演したアスペクトの早野氏は、Additive Manufacturing(AM)技術の応用、用途、装置の潮流、取り巻く環境と市場動向、日本の技術と政府の取り組みを解説。1990年に3,000社が登録されていた木型工業会のメンバーが2015年には74社になってしまったと指摘して、今後どう生き残るのかを考えるべきだと述べていました。

 「超小型パワーレーザーの開発と産業への応用」を講演したImPACTの佐野氏は、現行700mのXFELを10mにするという目標を掲げ、ベンチマークと開発目標の具体化、海外への広報戦略、将来展開を含めたロードマップの作成が今後の課題と指摘。超小型パワーレーザーにおいては、高出力パルスレーザーを日本に復活させるとして、ベンチャー設立を含め技術移管およびシステム化・製品化戦略とユーザーとの連携による応用発掘と実用化推進が重要と述べました。

 「光テクノロジーロードマップ~光加工・計測技術」を講演したレーザー総研の藤田氏は、2030年社会における光加工・計測、光医療の姿を想定した上で、その夢はいつでも・どこでも・何でも3Dプリンターと痛くない光診断・治療の実現と述べていました。

 「光電子集積技術に関する開発動向及び技術ロードマップ2015」を講演したNEDOの吉木氏は、2015年時点では光電子集積技術を搭載するアプリケーションはスパコンやデータセンター、サーバーのフロア間からラック間の光リンクの一部にしか用いられていないが、2030年にはその搭載範囲は飛躍的に拡大、市場の50%を占めるだろうと予想しました。

 「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発~アクセスネットワーク向けシリコンフォトニクス」を講演したPETRAの佐々木氏は、アクセスネットワークシリコンフォトニクスの中において、GE-PON ONU向け光トランシーバーの要素デバイス開発(双方向波長合分波フィルター、スポットサイズ変換器、Ge-PD、利得結合型DFB-LD)と集積トランシーバー開発を紹介、さらにTWDM-PON ONU向け光トランシーバーの要素デバイス開発として、双方向波長合分波フィルターと消光比25dBのAWGを紹介しました。

 シンポジウム終了後には恒例の櫻井健二郎氏記念賞表彰式が行なわれました。第31回を迎えた今回の櫻井健二郎氏記念賞は、リコーの「レーザプリンタ用面発光レーザアレイの開発および実用化」と住友電気工業の「海底ケーブル用極低損失光ファイバの開発と実用化」に贈られました。
 受賞者はリコーがリコー未来技術研究所の佐藤俊一氏(技師長)、軸谷直人氏(シニアスペシャリスト)、原坂和宏氏(スペシャリスト)、伊藤彰浩氏(シニアスタッフ)の4名。住友電気工業が平野正晃氏(光通信事業部主席)、山本義典氏(光通信研究所主査)、田村欣章氏(光通信研究所)、川口雄揮氏(光通信研究所)の4名です。それぞれに表彰状、メダル、副賞が授与されました。

 リコーは、レーザプリンタ用書込み光源の開発に取り組み、高利得のGaInPAs/AlGaInP 歪量子井戸構造活性層、AlAs主体の高熱伝導率反射鏡、安定なモード・偏光特性のための高次モード抑制フィルター、均一な素子特性のための面発光レーザ素子レイアウトなど、独創的技術の開発によって世界最高出力および高信頼の面発光レーザアレイの実現とその実用化に成功しました。この面発光レーザアレイは、プロダクションプリンタに搭載され、高速かつ4800dpiという世界最高の解像度を達成して新しい印刷市場を切り拓いたことが評価されました。
 一方の住友電気工業は、世界に先駆けて純シリカコアファイバを開発し、さらにそのレイリー散乱を低減することにより、伝送損失が最小0.149dB/km、平均0.154dB/km と、研究、製品それぞれのレベルで世界記録を更新。本技術により製品化された極低損失光ファイバは、複数の国際大洋横断光ファイバ通信プロジェクトに採用され、海底光通信システムの性能向上に大きく貢献したことが評価されました。

編集顧問:川尻多加志

 

カテゴリー: レポート | コメントする